第46話3

文字数 597文字

そうなのか……いや、フブキ殿がおっしゃることだ。そうなのだろうな

 納得がいったのか白糸様はうんうんと頷いた。

 それから不動の前に立って声をかける。

私はフジカワ・シライトだ。

そなたの名前を教えてもらえないだろうか

おぉお俺はオオヒラ・フドウです! 

お、鬼でぃす

 あ、また噛んだ。
そうか。

フドウよ。これからもよろしく頼む

 白糸様が差し出した右手を前に、不動はどうしたものかと悩んでいるようだった。

 目の前にある右手を見て、白糸様の顔を見て、また右手を見て、己の右手を見る。

 それでも次の行動に移れずに今度は僕を見る。だからゆっくりと頷いてやった。

よ、よろしくお願いします!

 両手で白糸様の右手を握ると頭を下げた。

 白糸様の口元が緩む。

フドウは機巧操士の候補生なのだな
は、はいっ
連れ合いとなってくれる機巧姫とは出会えておらんのか
そ、そうです……
落ち込むことはない。

私だって天色の君に選ばれなかった。悔しかった

……悔しかったのですか
父上に続いて私も操士になれないのかと愕然となった。

本来、王たる者は戦いの場に身を置かなければならない。そうでなければ従ってくれる家臣はいなくなってしまう。

だが機巧武者になれない王など戦場には不要だ。足手まといだからな

そのようなことはないかと……
よい。事実だ
 歩兵同士の戦いであればいざ知らず、巨大な機巧武者に歩兵では太刀打ちできない。その意味で足手まといというのは正しい。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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