第25話1 ここが私たちの使う教室だよ

文字数 998文字

ここが私たちの使う教室だよ

 いったん部屋に戻って葵たちと合流してから最初に案内をしてもらった板敷きの部屋には誰もいなかった。

 寺子屋風に畳敷きで個々人に文机があって、正座しながら先生の教えを受けるようなイメージがあったけど違っている。

 個人部屋以外はどこも板敷きで土足のまま上がれるようになっていた。


 教室は二十畳ぐらいだろうか。

 コの字型に横長の机とそれぞれに椅子が配置されている。机がない場所に師範が立つのだろう。

 候補生の数が少ないからこんなものか。

澪の席はどこ?
基本的には好きな場所に座ればいいんだけど、暗黙の了解で決まっている感じかな。

私はここに座るようにしてるの

 そう言いながら教壇の正面に並べられた机の左側の席に座る。
あたし、ミオさまのとなりがいいです!

 さっと椅子に座ったのは翠寿だ。

 澪の隣に座ってご機嫌だった。尻尾も力強く左右に揺れている。

スイジュが座っているところにいるのがオオヒラ様で、その隣がロクジゾウ様。

ここから見て左側の机にウメゾノ様。一つ席を空けてカメイ様とニシナカ様がいて、右側の机はミョウケン様、ワカマツ様、トミナガ様、スゴウ様が座ってるかな

つまりはこんな感じか。


    教壇

梅園      明見

        若松

亀井      富永

西中      菅生

 澪 大平 六地蔵


 彼らが澪の同級生――この操心館の一期生だ。

みんな澪と同い年ぐらいなの?
ウメゾノ様はかなり年上で、ミョウケン様とロクジゾウ様もちょっと上かな。あとは私と同じぐらいだね。

国王様はみんなキヨマサ君と年齢が近いって言ってたけど、ウメゾノ様は二倍ぐらい年上になると思うよ

 今の僕の外見年齢は十三、十四歳ぐらいだから、梅園さんは二十七歳前後ってところか。現実世界の僕とたいして変わらないな。
これは想像だけど、梅園さんと明見さんが機巧武者になれる人じゃない?
え、すごい! なんでわかったの!? 

あ、きっと年齢順ね?

残念でした。

ここでは機巧武者になれる人のが偉いんだろう。師範の位置が上座だとしたら梅園さんと明見さんがその次の位置になるんじゃないかって思ったんだよ

なるほど……キヨマサ君はすごいなあ

 お城で食事をしたときに、この世界にも上座と下座、左上位っていう文化があるんじゃないかと思ってたんだよね。

 身分制度が厳しい世界ならこういうのがあっても不思議じゃないし。

じゃあ、次の場所に行きましょうか
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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