第15話2
文字数 820文字
お風呂はサウナ式ではなく、大きな湯船があった。数人が並んで足を伸ばせるようなサイズだ。
そういえば仕事で泊まり込み作業になったらスタッフと一緒に会社近くの銭湯によく行ったなあ。
すごいお湯が熱くて、ひーひー言いながら入ったものだけど。なんだかすごく昔のことみたいだ。
手ぬぐいを頭の上に置いて、のんびりと湯船につかる。
ああ、生き返る。
くぅ~、風呂はいいねえ。
家のお風呂だと足を延ばして入れなかったからなあ。本当にいい気分だ。広々とした湯船というのは実に素晴らしい。
手足の先から疲れが染み出していくみたいだ。
湯船の縁を枕に寛いでいると、ガラリと浴室の扉が開く。
浴室に入ってきたのは小さな女の子だった。
紅寿よりもさらに小柄で、
そして特質すべき点は――
彼女にもまた犬耳――いや、狼耳だ。人によっては怒り出すらしいから注意しないと――がついていたのだ。
おまけにお尻のあたりにはフサフサの尻尾もある。
きっと紅寿と同じ人狼の一族なのだろう。
おお、神よ。マヂですか。
こんなイベントがあるなんて聞いてませんでしたよ。感謝します!
いや、待て。
ここで慌てたら紅寿のときの二の舞になる。
同じ轍は踏まない。僕は学習ができる人間だ。
まずは冷静に状況を確認しなければならない。
名前を褒めると、にっこりとお日様のような笑顔をしてくれた。
くぅ、これです、これですよ、神!
こういうのを僕は待っていたのです!
うん、いいお返事で花丸をあげたくなる。
きっとこの子も操心館に所属をしているのだろう。それで汗を流そうと思ってお風呂場に来たら僕がいた。
うむ、実にありがち。漫画やアニメなら定番の展開だ。