第6話3
文字数 817文字
細い指が葵色の髪をかき上げる。
葵色――灰色がかった明るい紫色だ。
古くからある伝統色の一つで植物の葵の花の色に似ている。
ウィッグのような不自然さはない。そして髪を染めているわけでもないのだろう。
彼女は髪は生まれつき――といっては少し語弊があるが、最初からこうだったはずなのだ。
そもそも彼女はヒトではない。
彼女は人ならぬモノ。
人工的に生み出された存在。魂の色が同じ者の力を借り、強大な人型兵器――機巧武者となることができる人外の化生。石や木や糸や布や様々なものを駆使して組み上げられる創造物だ。
機巧姫はその体に特定の色の
勾玉の色は彼女たちの魂の色であり、同じ色の髪をしている。
そしてその色の名称で呼ばれるのが習わしだ。
そうつぶやくと彼女の口元が優しく緩んだのがわかった。
自然な表情、違和感のない仕草。
とても人形とは思えない。
彼女の繊手が僕の頬に触れた。
ゆっくりと形を確かめるように動く。滑らかな動き。指の感触。作り物には見えない。