第39話3

文字数 780文字

神代式がもっとも古く、神々の手によって生み出されたと言われている。

葵の君を見るまでは信じてなかったけど今なら断言できるよ。神代式は神が創り出したものだ。あれをゼロから人が生み出すのは無理だと思う

 神様か。それが僕をこの世界へ転生させた存在だろうか。

 異世界転生ネタではよく出てくる存在ではあるんだけど。

神代式は表情や仕草、思考までも人そのもの。あるいは人を超えた存在だったとされる。

機巧武者として戦えば国を滅ぼすこともできるなんて言われていた

国を滅ぼすって……とんでもないですね
国云々はさすがに誇張だろうね。でも人そのものという評価は事実だと思う。葵の君がそれを証明している。

一説には神代式の機巧姫は人との間に子をなしたともいうし、よかったら試してみない? なんなら手を貸すけど

結構です
そうか。残念だ
 さして残念そうには思えないけど、あえて蒸し返す必要もない。
君がどうやって彼女を手に入れたかは聞かないでおこう。

だからというわけじゃないけど、決して手放すなよ。彼女が敵に回ったらと考えるだけでも恐ろしいだろう?

もちろんです
 葵がいなければこの世界で路頭に迷う自信がある。かけがえのないパートナーだ。
古式の機巧姫は数百年前に神代式を真似て人間の手によって作られたものだ。

当時の最高の勾玉を使い、一本の神木から削り出された逸品。

神代式ほどではないが相当に強いよ。一説には千人の兵に値するそうだ

文字通り、一騎当千ということですか
機巧姫として最高品質であるのは間違いない。

深藍の君には会ったんだろう? 彼女は古式の機巧姫だよ

葵に比べると動き方や表情に違和感がありましたね
神代式と比べてやらないでくれるかな。

あれも優秀な子なんだ。口数は多くないけど、主人を立てるいい子だよ

 主人を抱き上げて去っていった後ろ姿を思い出す。

 梅園さんにはちょっともったいない子かもしれない。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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