第42話2
文字数 909文字
紀美野さんはくるりと後ろを向いた。
豊かな髪に美しい細工の入った簪が差さっている。模様は細かな石を使って描いているようだ。
女の子三人は看板娘に夢中だった。
他にも見せてもらおうと簪の置いてある場所に陣取り、あれがいい、これが綺麗だと盛り上がり始める。
ふわりと頬んだ葵は澪たちの輪に加わる。
その後ろ姿を男二人で見送った。
中伊さんの表情を見る限り、それは決してお世辞だけではなさそうだ。
機巧姫を持っていることが高いステータスになるのは間違いないらしい。
下手に思い入れを持ちすぎてしまうと商品に対して純粋な評価を下しにくくなってしまいますから。
あの勾玉を使ったのならばもっとこう……などとね
その感覚はゲームを作っていると純粋にゲームを楽しめなくなるのと似ているのかもしれない。
純粋な戦力となる機巧姫の国外への持ち出しは固く禁じられている。それを破れば極刑は免れない。
にもかかわらず欲しいと思わせるだけの魅力が機巧姫にはある。