第24話3

文字数 955文字

現在、この国に戦える機巧武者はどれぐらいいるんですか
深藍(ふかあい)孔雀青(くじゃくあお)。それから常盤(ときわ)青朽葉(あおくちば)の四旗ですな

 あとは先日の戦いで破壊されて修理中の青藤(あおふじ)がいると。

 つまり五旗。関谷にとって最大の数がいたわけだ。

私も戦えたらいいんだけど……ごめんね
澪が謝る必要なんてないよ

 機巧姫が修理中なら仕方がない。あるものでなんとかすればいい。

 しかし、僕を加えても稼働できるのは現在のところ五旗か。

少しばかり心許ないですね

 今回、東から攻めてきたのが五旗。北の三桜村に三旗。

 東の戦いでは互いに一旗ずつ落ちて、北は僕が三旗とも倒している。

 撃破した数で上回っていても、元の機巧武者の数が違うとなると話は別だ。相手にとってはまだまだ余裕ということも考えられる。


 仮に今回の襲撃が様子見であったならば、次はより多くの機巧武者を動員するのは間違いない。何しろこちらの手の内は見えている。

 やはり戦える機巧武者の数を増やすのが急務だ。

操心館にいる候補者が機巧操士になれる見込みはどの程度なのですか?

 すっと澪が顔を伏せたのがわかった。

 あまり高くないのかな?

実はどうすれば機巧姫の連れ合いとなれるのかはっきりとしていないのです。

武勇に優れる良い血筋の者が選ばれやすいと言われておりますが確実ではありません。

例えば、我がヒロハタ家はここ五代続けて機巧操士になっています。今は私の息子ソウゲンが青藤の君の連れ合いです。

逆にフジカワ家はハクセン様、その長男シライト様も天色(あまいろ)の君の連れ合いになっていないのです

 機巧操士になれる基準がはっきりしないというのは困るな。操心館ではどうするつもりだったんだろう。


 困ると言えばもう一つある。

 こういった戦乱の世界で国のトップが戦場に出ないというのはあまりよろしくない。

 近代のような指揮系統であれば、作戦立案と現場は明確に分かれている。作戦を指揮する人物が前線へ出ることはない。

 だが連絡を密にできない世界では、全軍を指揮する総大将が陣頭に立って士気を高めるのが肝要だ。そうでなければ軍は簡単に瓦解してしまう。

 そのあたりの危惧もあって、あの切れ者の国王様は子飼いとなる機巧操士を育成する場所を用意したとも考えられる。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色