第53話1 人狼というのは本当に素早いことですね
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見張りがまだいるだろう通りは避けて長屋の反対側に出ることにした。
狭い路地を抜けていく。
中伊さんは明らかに様子がおかしかった。
あの時点では情報が全くなくて推測も何もできなかったけど今は違う。
だから人形を売っている津島屋に来ることすらおかしいと思ってさ。
何らかの事情があったんだろうね
入居者募集の札がかかる長屋木戸をくぐって入ったのとは反対側の通りに出た。
自然と早くなろうとする足の速度を意識して落とす。僕を追い越してしまった澪も足を緩める。
歩きながら後ろに視線を送ると、葵は小さく横に首を振った。
僕には気配感知の能力がないから、こういうのはすべて他人任せになってしまう。