第3話2

文字数 1,127文字

 次は外見だ。

 ロリがボブ、おねーさまがウェーブときたから、髪型はロングストレートがいいか。

 シルエットの状態でどのキャラかわかるデザインが望ましい。だからリボンをつけるとか、編み込みをするだとかのオプションも考慮したい。

 しかし、これまでのロングストレート系のキャラはアホ毛やらもみあげやらを追加していたから、素直なロングヘアのキャラはここしばらくいなかった。

 それならば、あえて目立つ個性をなくしたのを個性とするのもありだ。


 あとは細かいところを詰めていこう。

 たとえば前髪の処理。

 揃えるか、分けるか、おでこを出すか。それぞれ受ける印象が異なる。

 どれがコンセプトに一番合致するだろうか。


 目の形はどうするか。

 大き目? それなら可愛らしい面を強調するのがいい。

 切れ長? それならクール系に寄せるのもいいだろう。


 頭の中にぼんやりと描いていたイメージを一つひとつ明確化していく。

 外見がおおよそ固まったところで性格設定に移る。

 洗い出した項目を見直してみると、これは真面目系お嬢様あたりがしっくりきそうだ。

 もちろんギャップを狙うこともできるが、正統派とした以上は素直に設定しよう。

 王道、鉄板、正統派。悪くないイメージだ。


 両手を上へ伸ばして背筋を伸ばす。

 首を左右に傾けると、ゴリゴリといい音がした。

 集中して作業をしているからか、肩のあたりがかなり凝っている。

 近いうちに整体へでも行こうか。

 床に直接座ることなんて滅多にないから姿勢が悪いのも影響している。

 ネクタイを緩める。

 よし、もう一息だ。


 ――パチパチという音が響いている。


 この外見なら口調は丁寧な感じがいい。

 かといって「~ですわ」までいくとやりすぎだ。丁寧よりな普通の女性口調がしっくりくる。

 具体的なイメージがしやすいよう発注までにはいくつかサンプルのセリフを用意しておこう。


 一人称や二人称も決めなければ。

 私、わたくし……ありきたりか。

 あたし……だとやや幼いし、砕けすぎた感じになる。

 自分の名前を一人称……現実にはあまりいないけど二次元ならあり。でもこのキャラだとちょっとイメージと違う。


 うーん、どこかにこのキャラならではの個性が欲しい。

 たくさんのキャラに埋もれてしまっては悲しいからな。

 だからここはあえて少し変わった一人称にしてみるか。


 我、ワシ、わっち……狙いすぎだ。

 それにこのあたりだと古風な感じが前に出過ぎてしまう。

 落ち着いていても古風まではいかないぐらいのバランスにしておきたい。


 うーん、うーん………………よし、後回し。

 ぱっと思いつかないことはひとまず置いておいて先へ進もう。

 こんなところで止まっていては駄目だ。

 考えすぎないほうがいい。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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