第11話2
文字数 661文字
問いかけには応えず、葵は正面をじっと見ている。
視線の先には何もない。風に揺れる草むらがあるぐらいだ。
葵の声に促されたのか、草を踏む音を立てながら忍装束の小柄な人物が姿を見せる。
葵に
澪が駆け寄って抱きしめている。
おそらくは澪が言っていた優秀な忍びだろう。
そう言いながらペタペタと相手の身体を触っている。
僕のときと同じ展開だ。きっと澪は誰に対してもこうなんだな。基本的にいい人なのだと思う。
ただ異性の身体をペタペタ触りまくるのはそのなんだ。ご遠慮願いたい。
忍びの衣装は澪のものによく似ているけど色が茶色っぽい。木の幹に溶け込みやすい色にしているのかもしれない。
ちなみに現実世界では黒色の忍装束というのはなかったらしい。
理由は簡単で、黒だと昼間は逆に目立ってしまうから。紺色や茶色、柿色なんかが多かったという記述を読んだことがある。
忍びは澪よりも小柄な女の子だ。
明るい色合いのふわふわの髪は肩のあたりでばっさりと切り揃えられている。
そして何よりも気になるのが――
そう、彼女の頭にはモフモフとした犬のような立派な耳が生えていたのだ!
まさかまさかまさか!
この世界ではケモノ娘もアリなのか……なんということだ。
業が――いや、懐が深すぎる!