第20話1 謁見の間から広間へと場所を移した

文字数 634文字

 謁見の間から広間へと場所を移した。

 先ほどの部屋よりは狭いけど装飾の入った欄間とかがなくてどことなく落ち着いた雰囲気がある。

 ああいう立派な部屋は変に緊張してしまうから精神的にあまりよろしくない。もっともお城で案内される部屋はどこも立派でのんびりできそうにないけど。


 藤川国王を上座に、あとの面々は平行に向かい合う形で座っている。

 上座に近いところに向かい合う形で家老の二人、井田家老の隣に座っているのは藤川家長男の白糸(しらいと)様、続いて三女ほの()姫が並ぶ。

 僕と葵と澪はその向かい側、福岡家老の隣に並んで座っている。


 白糸様は藤川家の長男と紹介されているので、彼が跡取りなのだろう。

 容姿から判断するにまだ十代前半ぐらい、元服したてというところではないだろうか。まさに紅顔の美少年という感じだ。


 長女と次女はすでに他家へ嫁いでいて、四女以下はまだ幼いので、三女のほの香姫がこの場に呼ばれていた。

 女性の同席を許すあたりは戦国時代ごろの風習とは違うようだ。


 ほの香姫は思わず見つめてしまうほどの美人だった。

 大輪の花のように美しいけど、それが華美過ぎず品のある感じなのだ。万人受けする美人だと思う。文字通りアイドル顔負けだ。

 道を行けば十人に九人が振り返る美しさだと言っていい。


 各々の前には御膳が置かれている。

 部屋の様子といい食事が並べられた感じといい、会社の慰安旅行を思い出す。

 あのときは余興で後輩と二人羽織をして大受けだったな。懐かしい話だ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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