第49話2

文字数 631文字

やはりフブキ殿に相談をして正解だった

 そんなキラキラした瞳で見ないでください。汚い計算ありきの案ですから。


 白糸様は店主を説得して約束を取り付けることに成功した。

 今回はお店にある既存品から選んで組み上げるのではなく新たに型から起こす発注だ。

 当然、時間もお金もかかる。量産するためのベースを新規に作ることになるのだから仕方がない。完成には二カ月ほどかかるそうだ。

人形師に新規の人形を発注した場合、機巧姫は完成までに最低でも一年はかかります。

人形雛で数カ月といったところでしょうか

 お店に並んでいるあとは化粧を施すだけの人形とは違い、一から作るとなると素材となる神木の選定やら勾玉の選別やらで最低でもそのぐらいは必要になる。

 そう考えると二カ月で完成というのは圧倒的に早い。


 それからもう一つ、宇頭さんには個人的に提案をさせてもらった。

 新々式の人形の商品展開について思うところがあったのだ。こちらが動くのはもう少し先になるだろう。

フブキ殿、感謝の言葉もない。

これで妹の願いをかなえてやれることができそうだ

まだ上手くいくとは限りませんよ。

最終目標はほの香姫が操心館へ所属する許可を得ることですからね

わかっている。それぐらいは自分の力でなんとかしてみせるつもりだ。

なに、知恵はフブキ殿に授けていただいた。あとは私が上手くやればいいことだ

シライト様なら絶対にできると信じてます!

 こう見えて白糸様は大人物なのかもしれない。

 たった一日で不動のような味方も得ているし。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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