第15話2
文字数 705文字
だがそれならば脱衣所の外にいる葵が何故止めなかったんだろうかという疑問がある。僕が中にいるから少し待っていてほしいと頼むことはできたはずだ。
それに彼女の第一声も気になる。
まるで僕がお風呂に入っていることを知っているような口ぶりだった。
自分に言い聞かせる。
状況に甘えるな。自分が望む展開に基づいて行動するな。
常に最悪の事態を想定して行動しなければ痛い目を見るということを今の僕は知っているのだから。
出ちゃダメなのか。それなら仕方がないな。
途中まで上がった腰を改めて湯船に沈める。
彼女の顔は喜色にあふれていた。
こちらへ駆けてくると、勢いよく湯船に飛び込む。
わかってる。
彼女の目的は温かいお風呂であって、僕とお風呂に入ることではない。そこをはき違えてはいけない。