第65話1 朝靄が立ち込めている

文字数 400文字

 朝靄が立ち込めている。

 そんな中、翠寿が一人だけ旅立つ準備を終えていた。

これが手紙だから広幡館長にちゃんと渡すんだよ
はい!

 手紙を懐に入れた翠寿は「いってきます!」と元気な声で挨拶をすると走り出す。

 そしてあっという間に姿が見えなくなってしまった。

相変わらず人狼ってすごいなあ
とはいっても〈神速〉を使って全力で一日中走り続けられるわけじゃないからね

 澪の体調もすっかりよくなったのか顔色がいい。

 その澪の周囲を紅寿が落ち着きのない様子でグルグルと回っている。

もう大丈夫だよ。

心配してくれてありがとうね

 澪が頭を撫でると紅寿は目を細めて尻尾を左右に振っていた。

なあ、兄貴。背負ってみるから落ちそうにないか見てくれるか。

よいしょっと

大丈夫そうだね
よっしゃ。というわけで俺の準備はできたぜ
私たちの準備も終わっています
 旅装を整えた中伊さんと紀美野さんが小屋から姿を見せたところだった。
じゃあ、出発しようか
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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