第6話2
文字数 780文字
何人生き残っていたのかわからないし、知りたくはない。
僕にできた最善のことをしたとは思うけど、既に命を失った人を助けることはできないのだから。
それに移り住んだ先で生き延びた人たちがちゃんと生活できるかもわからない。
でも生きていられてよかったと思ってくれたのなら、僕がしたことは間違っていなかったのだと言える。そう思いたい。
とりあえず、ほっとすることができた。
急場をしのげたのだからよしとしよう。
そうすると途端に気になることができた。
彼女は僕を頭頂部方向から見下ろしている。
そして頭を包む柔らかな感触。
この二つから求められる答えは――
不吹清正さん、正解です。
ご褒美は美女の膝枕となります!
改めて実感する。後頭部が触れている柔らかい部分。
女性の太ももというのはなんと優しい感触なのだろう。頭だけでなく心まで包み込まれるような安心感があった。
このままずっと横になっていたくなる。
優しく囁かれると、なぜだか心の奥底がざわめく感じがする。
どうしてだろう。
彼女とは初めて会ったはずなのに。初めて聞く声のはずなのに。
僕の魂が彼女のことを知っていると叫んでいるかのようだ。
いや、きっと気のせいだ。そうに違いない。
自分に言い聞かせながらつぶやいた。
降り注ぐ柔らかな日差しに目を細める。
さっきまでの騒ぎなどまるでなかったかのような穏やかな空を渡っていく二羽の鳥が見えた。はらりひらりと桜の花びらが舞っている。