第61話4
文字数 750文字
上体を後ろに倒す。
最初から後ろに体重をかけてあったから転がるのは容易い。
仰向けになった視界内に鶯色の機巧武者が入る。
眼前を通り過ぎようとする相手の腹を蹴る。オーバーヘッドキックの要領だ。
突進の勢いと僕の蹴りによって鶯色の機巧武者はかなりの距離を飛ぶ。
空中で姿勢を変えて見事に両足で着地をする。
ズブリという鈍い水音。
ここは枯れた植物が十分に分解されずに堆積したために地盤が緩く、底なし沼のような状態になっている。
澪によると、うっかりこの場所に足を踏み入れた大型の動物が頭まで埋まってしまったという話も残っているそうだ。
肩が埋まり、面頬が泥に浸かる。
声が出せなくなると鍍金鍬形の立物もすぐに見えなくなった。
膝から力が抜けて崩れ落ちる。
鎧姿を維持することもできそうにない。
誰かの声が聞こえるけどなんと言っているかはわからない。