第2話2
文字数 850文字
ビィンと弦が鳴ると彼方で鈍い音がする。
手ごたえがあったのだろう、深藍の機巧武者の
いつもと変わらない景虎の威勢の良さに、澪は思わず微笑ましい気持ちになった。
景虎とは過去にいろいろとあったが、彼は間違いなく優秀な侍だ。
戦場で安心して背中を預けられるぐらい頼りになる。
ミオがこの水縹の連れ合いである以上、他の者に後れを取るはずがありません
顎を軽く反らして、ふふんとでも言いたげな水縹の姿が思い浮かぶ。
彼女の何事につけても自信ありげなところを澪は嫌いではなかった。
泥濘に足を取られながらも敵の機巧武者が坂道を駆け上がろうとしている。
放てぇ、放てぇぃ!
指揮官の広幡の声はこの雨の中でもよく通る。
成果を確認する間もなく次々と矢を放つ。
まるで雨を弾いているかのような冴えた青色をした
ヒョウという音を残すと敵の額を射抜いていた。
頭から矢を生やした機巧武者はその場で両膝をついて身動きしなくなる。
この視界の悪い中、小さな的を狙える技量に味方から感嘆のため息がもれる。