第28話5
文字数 860文字
完全に息が上がっている。
無様な姿だ。
見ようによっては土下座にも見える。
それでも。
膝に手を当て、立ち上がろうとする。
力が入らないのか、ガクガク足が震えている。
ようやく立ち上がるが、背筋を伸ばすことすらできない。
だというのに。
足を前へ出す。
体を引きずるようにして前へ出ようとしている。
もう足が上がらないのだろう。
膝から崩れ落ちた。
もう立ち上がれないだろう。
この場にいる誰もがそう思うような姿。
だがそれでも。
深藍の機巧武者は立とうとする。
力が入らない体に鞭を打つように。
膝は地面から離れない。
もう立てないのだ。
それでも立とうとする。
そこまでする理由はなんなのだろうか。
僕に負けたくないからだけとは思えなかった。
そんな小さなことに対してなら、とっくに心が折れていたとしてもおかしくはない。
何かが彼を支えているのだけはわかる。
立ち上れない深藍の正面に立つ。
もう顔すら上げられない。
頭を垂れている。
正面に僕がいることもわかっていないのではないだろうか。
手がジリジリと伸びてくる。
それはとても殴っているとはいえない姿だ。
だが、震える指先が葵色で
己の意志に反して、ついに力尽きる。
手が垂れ下がり、両膝から力が抜け、体が崩れ落ちる。
地面に倒れ込もうとするところを僕が受け止めた。