第29話1 機巧武者の姿を解いた梅園さんは意識を失っていた
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機巧武者の姿を解いた梅園さんは意識を失っていた。
まるで大雨に打たれたかのようにぐっしょりと全身に汗をかいている。
澪が〈手当〉を使うと言ったのだが、脇に立つ深藍の君はただ黙って首を左右に振るだけだった。
それから僕たちに対して深々とお辞儀をすると、大きな体の梅園さんを肩に担ぎあげた。背を向けて本館へ歩いていく。
僕たちはその背中を黙って見送った。
この模擬戦を教訓に、彼はより強くなると私は信じていますよ。
なにしろ彼には侍としての矜持がありますから
館長は目を細めながら二人の姿を見送っていた。
その視線がこちらを向く。
今の戦いを見た感想がそれなのかと思って不動の顔を見る。
意外にも彼は難しそうな顔をしていた。
翠寿はパタリと耳を後ろに倒していた。尻尾も力なく垂れている。
不安なのだろう。