第20話6

文字数 833文字

ところで、フブキよ
はい
お主、嫁をとらぬか
……は?
 いきなり何を言い出すんだ、このおっさん――じゃない、国王様。
そこにおるホノカはどうだ。お主となら年の頃もちょうどよいと思うが。

親の儂が言うのもなんだが、よい娘だぞ

 促されて視線を向けた先には花のように美しい少女が頬を赤らめて俯いている……やばい、かわいい。
それはいいお考えですな

 即反応したのは井田家老だった。

 この人、国王様の太鼓持ちなのだろうか。さっきからイエスしか言ってない気がするんですけど。

関谷の危機を救ってくださったフブキ殿とホノカ様であれば誰もが羨む夫婦になること間違いないでしょう

 そんなことはないと思うんですよねー。

 だってほら、あなたの向かい側にいる人の顔見てくださいよ。

 僕の横顔に鋭い視線をめっちゃ感じるんです。僕からは見えないんですけど、その人のおでこのあたりに青筋が浮かんでませんか?


 ホント、親の仇のように僕を見るのをやめてもらえませんかね、福岡家老。

 あなたは井田家老とは反対側の役割、王様を諌める側の人なんでしょうけど、この件に関してこれっぽっちも僕は悪いことをしてないですからね?

ホノカはこれまで大きな病もしておらん。健康は儂が保障するぞ。

あとな、母親に似たのか乳と尻もでかいから子宝には恵まれるはずだ

 こ、子宝って……セクハラ! セクハラ上司がここにいます!

 ほらほら、ほの香姫だって顔赤くしてるじゃないですかっ。

 いくら自分の娘だからって言っていいことと悪いことがあるんですよ!

身に余るお話ですが……申し訳ありません
そうか? まあ、お主がそう言うのなら仕方ないか。

だが希望するのであればいつでも言ってくるがいい。

この頃、ますます美しくなってきてな、外にやるのが惜しくなってきた。カカカ

 この世界の身分のある女性は政略結婚が基本なんだろうなあ。

 かわいそうにとは思うまい。そういう価値観が当たり前の世界なのだから。

 ……ほの香姫も僕をチラチラ見るのはやめてください。照れるので。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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