第24話4

文字数 1,116文字

既に機巧武者となれる者が近くにいればよい影響を受けて連れ合いとして認められやすいのではないかと考えてこの学校を作ったのだと聞いております。

ですから身分を問わず望みがありそうな者を集めました

具体的にどういうことをする予定なのか聞いてもいいですか
武芸百般を修め、学問をよくし、精神の高潔な者が機巧姫の連れ合いとして選ばれるといいます。それ故ですかな、良い血筋の者ほど機巧姫に選ばれやすいのは。

ですから、操心館ではさまざまな武芸や学問を学んでもらい、精神を鍛える場所にするつもりです

 健全なる精神は健全なる身体に宿るってやつかな。

 もっとも、あの言葉の本来の意味は、鍛えていない不健全な体には健全な精神は宿らないということではないんだけども。


 機巧操士になれる原理がゲームと同じならば、機巧姫の持つ勾玉の色と操士候補の魂の色が同一であればいいはずだ。

 この場合の問題は候補者の魂の色をどうやって確かめるかだな。

 魂の色と勾玉の色が違った場合にそれを近づける方法があればなおよしだ。


 広幡館長によると、今後は剣術や柔術、槍術、甲冑組討術、弓術、馬術、法術といった武術の他、歴史や文学などの学問を修めさせていくらしい。

 砲術ではなく法術というのがこの世界らしいところか。

 ゲームにおいて砲術と法術は、刀、槍、弓に続く四番目と五番目の要素としてストックしてあったんだけど。

剣術については愚息のソウゲンが師範を務めさせていただく予定でした。

それ以外の担当は決まっておりません。生憎、できたばかりの施設でして

弓術が盛んな関谷においてソウゲン様は剣術家としても有名なんだよ。だから撃剣師範を務められていたの
それなら早く戻ってもらえるといいね
機巧操士を育てると掲げているものの現実は人手が足りず、また候補生の数も十分ではありません。結果が出るのもしばらく先のことでしょう。

ですが関谷のため私は全力を尽くす覚悟です。

フブキ様にもご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします

そんな、こちらこそ至らぬところが多いと思いますので……

 実年齢でもずっと上の人に頭を下げられても困る。

 しかし広幡館長の人となりはよくわかった。

 たまたま武功をあげて客将として迎えられているとはいえ、年少者の僕に対して頭を下げられる人だ。尊敬に値する。この人の力になりたいと思わせる人物だった。


しばらく授業を行う余裕はありません。今のうちに施設を見学しておいてください。

案内はアワブチさんに任せます

はい
朝夕の食事は操心館で用意していますが、外ですませてもかまいません。

というか、多くの者は外で食事をすませているはずです

 うん、なんとなく理由はわかる。

 まずいもんな、ここの食事って。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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