第10話1 それよりも今は他に聞いておくべきことがある

文字数 857文字

それよりも今は他に聞いておくべきことがある。
あのさ、この辺りのことを聞いてもいいかな
このあたりっていうと?
えーと、どういう名前の国なのかとか、誰が治めているのかとか……実は遠くからこっちに来ていてさ、この辺のことをよく知らないんだ。

だから教えてもらえると助かるんだけど

ああ、なるほど、そうだったんだ。

たしかにこんなところに普通の人は来ないだろうし……もしかして迷子になったとか?

うん、まあ、そんな感じかな。街道からそれちゃったみたいでさ。

慌ててたのもあって、どこにいるかわからなくなっちゃったんだよ

実は私もよく迷子になるの。

街中を歩いていて目印にしておいた荷車があそこにあるからって安心してたんだけど、帰り道になると見当たらなくて迷ったり、全然違う場所に行ったりしちゃうんだよね

 方向音痴の人には定番のあるあるだ。

 自動車みたいな動くものを目印にするから、それが移動してしまうと場所がわからなくなって迷子になるっていう。

 山とか目立つビルといった動かないものを目印にすればいいんだけど、そういう発想にはならないらしい。

じゃあ、改めて自己紹介するね。

私はフジカワ家家臣のアワブチ・ミオ。

ここは関谷国(せきやのくに)で、白相国(しらそうのくに)、東にある霧峰国(きりみねのくに)との国境に程近いところよ

 ほほう、関谷に白相と霧峰か。どれも覚えがあるぞ。


 関谷は大陸の中心部から少し東にある海に面した小国だ。

 国土の大半が山だから米の生産力に換算する石高は低い。その代りに山からとれる木材や鉱物の生産地として有名なのと、その加工品による交易で商業的な発展を遂げている国だと設定したはずだ。


 関谷の東にある霧峰はゲームの初期段階で主人公のいる国に侵攻してくる大国として設定していた。

 ちなみにゲームの主人公が最初にいる国が白相国だ。関谷の北にあり霧峰とも接している。


 やはりこの世界のベースは『カラクリノヒメ』で間違いなさそうだ。

 ただゲームのスタート地点と違う国に来てしまったのが気になる。どういう理由なんだろう。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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