第22話1 さて、ようやく一人になれた
文字数 599文字
さて、ようやく一人になれた。
正確には一人と一体か。
僕の前に葵が正座をする。
その仕草ひとつをとっても、とても人形だとは思えないほど滑らかで自然な動きだ。
葵を見た人が一様に驚くのも無理はない。
根本的な疑問を解消しておきたかった。
流されるまま状況を受け入れて、それはそれとして納得してはいる。でもこの確認は大事なことだ。
ただなんとなく雰囲気に合わせるのと、きちんと覚悟を決めて臨むこと。両者において過程と結果に大きな違いが出てくるのは仕事でもよくある。
そこを自分の中ではっきりさせておきたかった。
ふむ。嘘を言っているようには見えない。
もっとも人形の表情や声音から嘘かどうかを見抜く技術を持ち合わせていないから、ただの直感に過ぎないけど。
最初から選択肢を制限されていて、僕を選ばざるを得なかったという可能性は考慮しておく必要はあるだろう。