第14話1 廊下を進んでいった扉の一つを澪がノックする

文字数 633文字

 廊下を進んでいった扉の一つを澪がノックする。
入りなさい

 部屋の中は和洋折衷の感じだった。

 床は板張りでテーブルがある一方、違い棚のある床の間があったりする。

 広さは十畳ぐらいだろうか。それほど広くはない。

 奥にある大きな書斎机に老紳士が座っていた。

アワブチ・ミオ。報告に参りました
伺いましょう

 木星往還船が完成したら機関長はこの人しかないと言われるだろう渋くて深みのある声だった。

 頭髪は白いものが混じっているせいか全体的にグレーに見える。右のこめかみのあたりに五センチほどの切り傷の跡があって表情のすごみを増しているようだった。

 それほど背は高くないのに肩のあたりの筋肉が盛り上がっているのが服を着ていてもわかる。ただ座っているだけの人ではないのだろう。

 ちなみに着ているものは詰襟にも似た服だ。

 軍隊の制服に近いという印象を受けたけど、そもそも詰襟は軍人や官僚の制服だったな。

東の砦を攻めてきた敵機巧武者は五旗。

我が方はヒロハタ様の青藤(あおふじ)以下、深藍(ふかあい)孔雀青(くじゃくあお)の三旗で迎え撃ちました。

一旗が落ちたところで敵は撤退。機巧操士は砦に残り警戒を続けています

こちらの被害は?
孔雀青はほぼ無傷でした。深藍は左腕と右足を損傷しましたが大丈夫です。

それから……青藤は機巧武者の姿をとれないほど――

続けてください
その……ヒロハタ・ソウゲン様は負傷しましたが、辛うじて命は取り留めました
 それからいくつかの質問に澪が答えて報告は終わった。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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