第16話3
文字数 860文字
途中、何度か甲冑を身に着けた人たちとすれ違った。
遅ればせながら、敵に攻められた場所へ後詰めの兵を送り込んでいるのだろう。
大規模な戦争を行おうとすれば事前の準備がいる。兵を揃えるだけではなく、武具や食料だって必要だ。
そういうのはスパイを忍び込ませておけば事前に知れる。
だがこの世界では機巧操士と機巧姫を敵国に潜り込ませることができれば大規模な陽動作戦どころかお城を攻め落とすことだってできてしまうだろう。
そのあたりはどうなっているのか澪に聞いたら、何を言っているんだという顔をされた。
ここで手形を見せてみろと言われなくてよかった。
機巧姫の出入りが厳しく管理されているのは、江戸時代の入鉄炮出女みたいなものなのかもしれない。
江戸へ持ち込まれる鉄砲と、江戸から出ていく女を厳しく取り締まったというあれだ。
一番高いところに濠に囲まれた立派な武家館があった。
操心館のように西洋風の趣はないが雰囲気のある建物だ。王が住むに相応しい風格がある。
振り返って見下ろせば城下が目に入る。
眼下に広がる街並みに思わずため息が出た。
南へ向かって町が続いている。両サイドは色の濃い山がそびえ立っているから関谷の土地が狭いのがよくわかった。
それでもここには多くの人たちが暮らしているのだ。