第20話5

文字数 652文字

ところで、フブキ殿が戦った機巧武者とはどのような武装をしており、どうやって戦ったのか聞かせてもらってもいいだろうか

 白糸様はやや頬を紅潮させている。

 男の子として戦いに興味を持ち興奮する気持ちはわからないでもない。

そうですね。

敵は三旗とも自分の身長よりも長い槍を持っていました

槍か。

距離があれば弓の相手ではないと聞くが……

生憎と無手でしたので、まず手近な相手の懐に飛び込んで槍を使えなくしました
なんとっ。

飛び込むと簡単に言うが、危険ではないのか

そこは度胸があれば
おおっ。さすがだな。

それで、どうやって倒したのだ

 いちいち感心をしてもらえればこちらの気分もよくなるというもの。

 いくつか誇張した表現を交えつつ、僕がどうやって倒したのかを説明し終えた頃には白糸様の目は尊敬の色に満ちていた。

やはり実戦を潜り抜けているフブキ殿の話には迫力があるな。

またお話を伺ってもいいだろうか

ええ、もちろんです
私も機巧操士になれていれば戦いに出られるのだが……
仕方あるまい。

あればかりは機巧姫次第。儂も選ばれなかったのだからな。

それに、お前など戦場に出ればすぐに殺されるだけだぞ。ろくに戦う訓練もしておらぬではないか

そ、それは……
無論、お前が今やっていることは無駄ではないがな。

知識が武器になる場所もあるのだ。戦う場所を間違えてはならん

はっ
しかし、口惜しいの。

いっそのこと娘たちでもよいから天色に選ばれる者がおれば諸侯としての面子も立つのだが……

 そんな藤川様のつぶやきに、白糸様とほの香姫は困ったように顔を見合わせていた。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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