第32話2
文字数 679文字
そういえば妹の大学合格祝いにデパートまで化粧品を一式買いに行ったなあ。
高校生の頃は薬局とかで安い化粧品を自分で買って使っていたみたいだけど、僕がちゃんとしたのを買ってやるって言ったら喜んでたもんな。
グロスがどうの保湿成分がどうの香りがどうのと効果がいろいろ並んでいたけど、僕にはよくわからなかったので店員と妹が話し合っているのを後ろでずっと聞いていた。
たまに「これはどう?」とか「この色ってよくない?」と聞かれたら、「いいんじゃないか」「似合ってるな」「綺麗だと思うぞ」と答えただけだ。
国内メーカーの口紅が三千円ぐらいだったかな。
僕でも耳にしたことがある海外ブランドの口紅でも五千円程度だったからそれでもいいぞって言ってたやったのに、結局、国産のを買っていたっけ。お祝いのときぐらい値段なんて気にしなくてもいいのに。
そんなことを思い出しながら紅猪口の値段を見たら思わず声が出た。
このお猪口一つでおよそ五十回使えるそうだけど三万圓もする。
海外のブランド品より高価だった。
店員は両眼を見開いて驚いている。