第63話4
文字数 688文字
紀美野さんは自分の隣をぽんぽんと叩いて紅寿を呼び寄せる。
しかし紅寿は顔を上げただけで澪の元を離れようとしない。
不動は三杯目にも関わらず堂々とおかわりを要求する。
しばらくの逡巡の後、紅寿も腰を上げる。
お椀に息を吹きかけて冷ました汁を口に入れるとピンと耳が立った。それから勢いよくお椀の中のものをお腹に収めていく。
お椀の中身は少し赤味色のついたとろとろのおかゆだ。
柔らかく煮込まれた小豆と小さくサイコロ状に刻まれているのは凍り豆腐かな。
真ん中には色鮮やかな梅干しが鎮座している。
見ただけで口の中に唾液があふれてきた。
うん、塩味が効いていて美味い。
これならいくらでも食べられそうだ。