第48話2

文字数 637文字

古式の人形は一本の神木から削り出されるためにどうしても量産することはできませんでした。

新式では複数の木を寄せ合わせて人形にすることで生産性を上げたのですが、こちらの人形は材料に陶磁器を使うことで部位ごとに生産できるようになったのです

そうやって好みの外見や体型にできるわけですか。画期的ですね
私はこの方式で作られた人形のことを新々式(しんしんしき)と呼ぼうと考えております

 素材を陶磁器にすることで大量生産を可能にしたのか。

 型があれば同じ形のものをたくさん作ることができる。まるでフィギュアの製造ラインだ。

 この発想の転換は素晴らしい。

陶磁器に変わったことによる影響はどうなのですか?
これが素晴らしい効果がありました。人形雛とは比較にならないほど自然な姿になるのですよ。

その動きの滑らかさは新式はおろか古式に迫ると言えるかもしれません

 それが事実ならば確かにすごい。

 高品質の人形を量産できるとなれば市場への影響も大きいだろう。

古式並みの仕草と美しさに加えて外見をある程度好みにできる。

これぞ夢のような人形と言えるでしょう

 このコンセプトを考えて形にした人に一度お会いしたいなあ。

 発想に至った経緯や実現の過程にどんな苦労があったのか是非とも聞いてみたい。

値段はどのぐらいなのでしょう
これが、ぐっとお安くできるのです

 言いながら指を一本立てる。

 人形雛の価格帯は二百万圓から六百万圓だ。

百万圓ですか。それは安い
 安い人形雛の半分の価格なら購入欲を刺激される人も多いだろう。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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