第46話2

文字数 835文字

白糸様。貴方は次の国王となる立場の方ですよね
ああ、そうだ
ここにいる不動は今でこそ候補生ですが、機巧操士となるべく日々鍛錬を積んでいます。

つまり、いずれこの国を守る力となります。

その者に対して先ほどの態度はいかがなものかと思いますが

 自分の物言いが不敬にあたるのは承知の上だ。

 でも白糸様は今の僕を救国の英雄だと思ってくれている。ならば、それを利用しない手はない。

む、それは……
兄貴、いいんだ。

俺のことは気にしないでくれ

 二人とも困惑の表情をしているが根本の部分は異なっている。

 白糸様は何故そんなことを言われなければならないのだというもので、不動はいらぬ波風を立てないで欲しいであろう。

戦いになった時、白糸様は命令を下さなければなりません。

戦えと。死んでもこの国を守れと

 非常な決断を下すために国のトップとして王は君臨しているのだ。
その命令を受ける側に立って考えてみてください。

普段から誼を通じている好ましい人物からの命令と、嫌な奴だと思っている人からの命令。どちらならば命をかけられると思いますか?

……無論、好ましい人物からのものだろう
不動は鬼です。力ある者に従います。白糸様はこの国の次期国王ですから命令を聞くでしょう。

ですが嫌いな人から死ねと言われて全力を出せるものでしょうか?

 戦えという命令には従ってくれると思う。鬼は戦うことが好きな一族のようだし。

 要は嫌々戦うのと喜んで戦うこと。

 どちらがよりよい結果を得られるだろうかという話だ。

現場で力を奮ってくれる知己を得ていると何かといいことがありますよ。

僕も助けられたことは多いんです

 常日頃からコミュニケーションを取っておくことは大切だ。

 ディレクターたる者、現場で手を動かしてくれる人たちと仲良くしておいて損はない。いざというときには泣き落としをしてでも力を貸してもらうことになるのだから。

 普段接点がない人からお願いされる場合と、雑談とはいえ話をする人。

 どちらの願い事を聞いてくれるだろうか、という話だ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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