第18話3

文字数 583文字

城下の人形師たちが葵の君の美しさを目にすれば、創作意欲を新たにすること間違いございませんでしょう。

そうすれば人形雛の品質もさらに向上し、より多く売れることになり、我が国が益々富むというわけですな

そうだな。それは期待をしたいところだ。

しかし本当に葵の君はいい。どうだろうか、儂の手元に置いておくというのは

それでしたら私が引き取らせていただきたく
いやいや、儂が
いえいえ、私が
儂が
私が
儂!
私!

 スパパーン!と軽快な音が重なった。

 王様の背後に控えていた小姓の二人がハリセンをもって国王様と井田家老の頭をはたいたのだ。

 国のトップになんてことを!

 すわ、この場で切腹でも申し渡されるのか!?っとドキドキしていたんだけど、国王様は「なんだよ、ちょっと話が盛り上がりすぎただけだろ。これだからクソ真面目な九十九(つくも)は……」とかブツブツ言うぐらいだった。井田家老も頭をかいているだけだ。

毎度のこととはいえ、お二人とも加減というものを覚えていただきたいっ。

お二人を御諫めする小姓たちのハリセンさばきに磨きがかかるなど、本来はおかしいことなのですからな!

 福岡家老が一喝したら、国王様と井田家老が体を小さくして反省をしていた。芸術提督とも言われた深みのある声で叱られたら僕だって反省する。

 しかし、この国って本当に大丈夫なんだろうか。

 あ、もちろん、葵は誰にもあげませんがね。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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