第66話1 よく無事で戻ってきてくださいました

文字数 797文字

よく無事で戻ってきてくださいました。

手紙は拝見しています。

早速、フジカワ様へは報告をしましたが、首謀者を取り逃したのが返す返すも残念です

逃げた日影は碧寿という人狼が追跡をしてくれていますから彼女に任せようかと
なるほど。

彼女であれば大丈夫でしょう

ちょっといいかな。

すぐにでも関所を固めるべきじゃないかな。奴らは他にも機巧姫を手に入れていたんだろう?

他に二体購入したようですね。

ちなみに三桜村には隠していませんでした

でも今のところ関所から持ち出された形跡はないわけだ

 茅葺さんが広幡館長を見ると、彼は黙って頷いた。

海路の可能性も考えられなくはないが沖へ出るような船があれば目に付く。そういった報告も入ってない。

だとしたら国内にまだ隠してあるか、関所以外を通って持ち出されたことになる。

今はそれはいい。いや、よくはないな。裏道が存在するのならそれを確かめておく必要があるし――

 つらつらと見解を述べていた茅葺さんの視線が僕の顔で止まる。
――お前の考えていることなんかすべてわかっている、とでも言いたげな顔だ
流石にそれは言い過ぎです。でも茅葺さんの考えていることはわかります。

怪我をしているのなら困難な山越えをするよりは関所を通る可能性のが高いだろうから、関所の警戒をしっかりすべきだとおっしゃりたいんですよね

やっぱりわかってるじゃないか。

僕の考えなんてまるっとお見通しってわけか

それはさすがに心配しすぎだと思うぜ。

操心館からも人を出して関所も砦も厳重に警戒してるんだ。怪しい奴を見逃したりしないって

それはどちらかというと関谷国に入ってくる人に対する警戒じゃないかな。

関谷国から出ていく人についてはそこまで厳重ではないと思うんだけど……そのあたりはどうなんです?

そもそも無断で機巧姫を国から持ち出すことは固く禁じられていますから、出ていくすべての荷物はしっかりとあらためています。そこは問題ないでしょう
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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