第23話1 うぅ~ん……なんだかとても息苦しい

文字数 782文字

 うぅ~ん……なんだかとても息苦しい。

 おまけに寝返りをしようとするけど体が動かない。

 これが噂に聞く金縛りか?

 おそるおそる目を開けてみる。

知らない天井だ……

 お決まりのセリフをつぶいてみた。

 ぼんやりとしていた意識がゆっくりと覚醒していく。

ああ、そうか。やっぱり夢じゃないんだ。ちゃんと目が覚めてるし。

ん、んん? なんか体が重いな

 掛け布団を見ると、目の前にモフモフの耳があった。
こ、これは……神よ、朝からこんなことがあってもいいのですかっ。それとも何かの罠ですか!? 

僕の日頃の行いを評価してということなら触っても許されるんだよな?

 手を伸ばして柔らかな髪を梳いてみる。

 艶々でサラサラだった。

 僕の手の動きが気持ちいいのか、ピクピクと耳が動いている。

ふあぁぁぁ。

おはよーございまふぅ

 ゆっくりと頭が持ち上がった。

 とろんとした目をしている。

 まだ半分以上は寝ているみたいだ。

ああ、おはよう。

翠寿はいつからそこで寝てたの?

んんぅ……朝からぁ、でしゅ……
わざわざ起こしに来てくれたんだ
うん……
うんじゃなくて、はい
ふぁい……

 布団の上で翠寿が微睡んでいるのを見ている僕。幸せだ。

 ああ、犬を飼っていたらこんな感じだったのかなあ。

 毎朝起しに来てくれる犬を飼いたいだけの人生だった……。

主様、入ってもよろしいでしょうか?
構わないよ

 すっと襖が開くと葵が部屋に入ってくる。

 肌着一枚なのでドキリとしてしまう。

主様を起こしに行くと言っていたのに、この子は何をやっているんでしょうね
昨夜は翠寿と一緒に寝たんでしょ。どうだった
ひどくはしゃいでいましたね。こんなに綺麗な部屋で寝るのは初めてだと。

興奮してなかなか寝つけなかったのでしょう

じゃあ、もう少し寝かしておいてやるか
それはいけません。

彼女には仕事があるのですから

 それもそうだな。

 かわいそうだが起きてもらうとしよう。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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