第54話1 新式は灰桜の君でございます

文字数 633文字

新式は灰桜(はいざくら)の君でございます
 揺らめく蝋燭の灯りのせいではっきりしないけど、名前から推測するに灰色がかった桜色の髪と勾玉を持つのだろう。
この度はそちらのアワブチ様の連れ合いをお探しなのでしょうか
いえ。彼女にも連れ合いはいますから
それでは……?
 機巧姫を求める符丁を伝えたのに買いに来たのではないと言われれば宇頭さんが疑問に思うのももっともだ。
今回は取引について提案をしに来たのです。

今後、機巧姫が入ってきたら優先的に操心館へ紹介していただければと思いまして

 これからは機巧姫の数が必要になる。

 もちろん、機巧姫を保有しているだけでは意味はない。共感できる機巧操士と対になっていなければ戦力にならないからだ。


 でも機巧姫を確保することには意味がある。

 具体的には他国への流出させないことで戦力増強を防ぐことができる。言い方は悪いかもしれないけど飼い殺しというやつだ。

 そうしたマイナスをなくすだけではない。

 茅葺さんの計画が上手くいけば操心館に所属している候補生が機巧操士として戦えるようになる。そのためにも機巧姫の確保は絶対に必要だった。

機巧姫の入荷はそうあることではありませんからお力になれるとは……

 そもそも機巧姫の需要は限られている。

 機巧操士でなければ機巧姫を活躍させることができない上に高価な品だ。しかも最近はより安価な人形雛の方が人気もある。

 必然として機巧姫は市場に数が出回らない。

 戦がなければこうして裏で細々と流通するのがせいぜいだ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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