第25話4

文字数 815文字

ところで鬼っていうのは……あの鬼のこと?
そうだよ。オオヒラ様は鬼の一族なの。

鬼っていうのは力を(たっと)ぶ人たちだから、力比べをして自分より上だと相手を認めたらなんでも従うというか……

 紅寿や翠寿たちの人狼に続いて鬼ときたか。

 ここは明らかにゲームと違う部分だ。どういう経緯で実装されたのか気になる。

これからはあんたのことを兄貴って呼ばせてくれ!
僕を?
ああ、そうだ! 

だって俺より兄貴のが強いからな!

 なるほど。鬼は脳みそまで筋肉の一族なんだな。把握した。
なあなあ、兄貴。どうやって敵の機巧武者を倒したんだ? やっぱり弓か? 

弓は卑怯だと思うんだけど、この国の奴らはみんな弓がいいって言うんだ。青の国って言われているからわからなくもないけどさ。

ソウゲン様ぐらいだな、俺に同意してくれるのは

青の国っていうのは?
関谷は弓術が盛んだからね。

それで青の国って言われているんだよ

 おっと、ここでもゲームの設定に似た話が出てきたな。

 ゲームでは色によってキャラクターの得意とする武器が決められていた。

 赤は刀、緑は槍、青は弓って具合だ。それがこういう形で反映されているとはね。なかなか面白い。

それで、兄貴はどうやって倒したんだ。教えてくれよ
素手で倒したよ。

武器がなかったからね

すげぇ! 本当に兄貴はすげぇんだな! 

やっぱり組討(くみうち)か? 力比べって感じがするし、俺は好きなんだけどな!

基本的には立ち技で、相手の体勢を崩しながら殴る蹴るだったかな
 葵に顔を向けると、その通りというようにうなずいていた。
おおー、これが兄貴の機巧姫か。

すっげぇなぁ。きれいだなぁ

ふふ、ありがとうございます。

葵と申します

ぉ、俺はオオヒラ・フドウでぃす

 あ、また微妙に噛んだ。

 別の意味で赤鬼になりながらお辞儀なんかをしている。

 どうやら大平さんは純情少年のようだ。

 性格もまっすぐで、授業がなくても鍛錬を欠かさず、礼儀正しい。

 悪い奴じゃなさそうだった。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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