第40話3

文字数 624文字

それに地元だったらみんな私のこと知ってるし、だから特別に部屋の隅で寝かしたままにしておいたりしてくれてたからっ
 それって放置されていたってことじゃないの?
こっちに来てからはあんまり飲まないようにしてるの。だって外で飲むと高くついちゃうし。

初めてのときはここでもこんなにおいしいお酒が飲めるんだって思ってちょっと感動して、ついつい飲みすぎちゃって……

酔いつぶれる、と
……はい
 澪は首を垂れて反省のポーズ。
いつもはコウジュたちが部屋まで運んでくれたの。

だから同じ失敗はあれから……十回、くらい……?

 澪の背後に立つ紅寿が首を横に振る。
に、二十回?
 再び首を横に振った。
さん、じゅっ……
 小さくため息をついたのが聞こえる気がした。
……ごめんね。

だ、だから、なるべく外で飲まないようにしてたんだけど、昨日はキヨマサ君にあのお店を紹介したくて、お酒も食べ物も美味しいって喜んでもらえて嬉しくてそれで……

また飲みすぎてしまった、と
…………はい
 再び澪は地面に右手を置いて反省のポーズをした。
準備できましたー!
 落ち込む澪の雰囲気を吹き飛ばすような元気な声で翠寿が奥の襖を開ける。
主様、今日はお出かけの予定があるのだとか
 葵も着替えを終えていて、すぐにでも出発できる状態だ。
キヨマサ君、どこかに行くの?
茅葺さんからお使いを頼まれててね。その下準備をするために城下町へ行くつもりなんだ。

二日酔いがひどくないのなら澪にも付き合ってもらいたいんだけど

うん、もちろんだよ
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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