第64話5

文字数 660文字

俺も犬っ子たちの姉貴から聞いただけだから。

あ、そうそう。そのヘキジュから伝言があるんだ。ヒカゲの追跡は任せてほしいってさ。領内で不埒な振る舞いをした輩に逃げられたとあっては末代までの恥だからっておっかない顔で言ってた。

あと姉貴によろしくって言ってたぞ

そうなんだ。

ゆっくり話がしたかったけど仕方ないよね。お礼はまたの機会にするよ

ヘキおねーちゃんなら安心です! だってとってもつよいから! 人狼の里でもいちばんつよかったです!
あれはかなりの使い手だぜ。あの人なら鬼の長と正面から戦っても簡単には負けないだろうな。人狼だから力押しだけじゃないだろうし。俺なら手玉に取られるだけだと思う

 不動の口ぶりからすると碧寿と手合わせを希望しなかったようだ。

 鬼の長とやりあっても簡単に負けそうにないってことは相当の使い手なのだろう。

 人狼は追跡能力に優れているし、吉報を待たせてもらうとしようか。

そういえばキヨマサ君はもう大丈夫なの? 

痛いとか苦しいところってない?

うん。澪のお陰だよ。ありがとう
そっか。じゃあ、もう一晩泊って明日出発しようよ。

私、お腹がいっぱいになったらまた眠くなってきちゃった……ふああぁ

ごめん、僕も休むよ。後のことは任せてもいいかな
ああ、任せとけ。

明日の朝に出発できるように準備はしておくぜ

 体を横にすると葵が当然と言わんばかりに枕元に座る。
どうかした?
膝枕はいかがしますか
大丈夫、必要ないよ。

葵も休んでおいて

承知しました。

ゆっくりお休みください

 挨拶に頷いて背中を向ける。

 なんだか居たたまれない気持ちになった。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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