第22話2

文字数 533文字

そもそも機巧姫が機巧操士と出会うのは必然です。

主様の魂の色と、吾の持つ勾玉の色が同じなのですから

 しゅるりと布がこすれる音がすると、葵は襟元を緩めてみせた。

 真っ白い肌が目にまぶしい。わずかに朱が差しているのがわかる。

 とてつもない色香を放っていた。

 いや、今はそういう場合ではない。

 見るべきは――

葵色の勾玉……

 葵の胸の中央には葵色をした大きな勾玉が埋め込まれていた。

 ゲームの設定と同じ、か。

 機巧姫には必ず固有の色を持つ勾玉が埋め込まれている。そして勾玉と同じ色の名前が与えられる。

 勾玉は彼女たちの生命の源であり、これが破壊されたときに機巧姫は死を迎える。


 一方、機巧操士の魂にも特有の色がある。

 機巧姫の勾玉の色と機巧操士の魂の色が同じとき、一騎当千の強大な力を持つ機巧武者となることができるのだ。

 もっともゲームの主人公はどの機巧姫ともパートナー――連れ合いになれる設定だった。主人公の特権というやつだ。でもこの世界では違っている。


 違うのはそれだけじゃない。ゲームと異なる部分はそこかしこにある。

 例えば澪や紅寿たちのような八岐という存在。僕の知らない技能に移動システム。

 未知の存在が目の前にある。それにクリエイターとしてワクワクしないはずがない。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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