第62話2

文字数 743文字

ああ、気持ちいい……夢だからかな
顔色も戻ってきたし、もう大丈夫みたいね。

あとこれは夢じゃないから

……そうなの?
そうだよ。

キヨマサ君が寒い寒いって言いながら震えていたから、この子たちがお布団に入って温めてくれてたの。

スイジュなんて見てるこっちが慌てるぐらい取り乱して大変だったんだから。起きたらちゃんとお礼を言ってあげてね

 そういえば反対側にも似たようなふわふわもこもこの耳があった。
それは本当に感謝しないとなあ
まだ夜明け前だから、そのまま寝ちゃっていいからね
どのぐらい寝てたのかな
半日くらいだよ。

思っていたより早く目が覚めてくれてよかった

お腹の傷は澪が治してくれたんでしょ。

助かったよ。ありがとう

それは……うん。普通のことだし。

ちょっとっていうか、かなり危なかったんだからね。もうあんな無茶はしないで

助かってよかったよ。死んでたらこの先の楽しみを体験できなかったし。

澪の領地で造ってるお酒も飲まないといけないしね

 視線をあちこちへと向けてみる。
……葵は?
汗をかいてるキヨマサ君の体を拭くために冷たい水を汲みに行ってもらってるわ。

すぐに戻ってくると思うよ

そっか。

葵にもお礼を言わなきゃ

 機巧武者の姿になってからはずっと彼女が励ましてくれた。

 何度心が折れそうになったかわからないけど、最後までやれたのは葵がいてくれたからだ。

そういえば中伊さんたちはどうなの? 

紀美野さんは無事だったんだよね?

うん、二人とも大丈夫。

そのあたりは落ち着いたらちゃんと話すから、もう少し寝てるといいよ

 再び澪の手が額に当てられる。

 冷たい手にほうとため息が漏れた。

 体内に溜まり続ける熱が彼女の手に吸い寄せられているかのようだ。

わかった。

実はまだちょっと眠かったんだ

安心して寝ていいからね。

おやすみ、キヨマサ君

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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