第33話2
文字数 689文字
僕からもお願いするよ。
葵のお化粧の先生になってもらう報酬として僕からは紅を送らせてもらう。それでどう?
ふえぇ!?
そ、そんなこと言われたって、その……紅なんてもらったら、えっと、まだそういうのは困るっていうか……
紅だと困るのか。じゃあ、他のでもいいんだけど。
綺麗に白が出る白粉があればそっちでもいいし
それでしたら白牡丹をおすすめいたします。
下地として塗りますとたいそう色が白くなるお品でございます
おそめさんが名刺ぐらいの大きさの包みを手に持っている。
一包で二千五百圓か。
お、おう……慌てて決めなくてもいいしね。必要なものを選んでよ
女の買い物が長いのはよく知っている。
ああでもない、こうでもないと悩んでいる時間が楽しいのだそうだ。
僕の場合は買うものは事前に決まっていて、あとは値段を見て買うか買わないかの判断をするだけだけど、女性は過程を楽しむのだと妹との買い物で嫌というほど教えられている。
いや、そういうことじゃなくて! えっとえっと……なんていうか、その……ね。紅っていうのは特別な意味があるから……
それなら白粉でもいいし、手鏡とかでもいいんじゃないかな。
刷毛みたいな消耗品でもいいと思うけど
ささっとおそめさんはおすすめの品を並べてくれるが、どれもいい値段がついている。ここぞとばかり上物を出しているな。別にいいけど。
澪はうんうん唸りながら考え込んで……っていうか、顔が赤くなっている。
もしかしたら体調が悪いのだろうか。それとも考えすぎて知恵熱でも出たとか?
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