お城のお風呂は蒸気を利用するサウナのような形式なのだそうだ。
それは単に二階からお風呂場を覗きたいだけなのではなかろうか。
そいう道に白糸様を引き込むのはどうかなあと思わないでもない。ないけど、白糸様がどういう反応をするか見てみたい気持ちもあった。
そのような場所があるのか。
それなら私も行ってみたい
ご本人も前向きなようだしね。
この件については誰も悪くない。
湯船から出て洗い場で体を洗ってから二階へあがることにする。
受け取ったお菓子はたっぷりの小豆餡をまぶしたぼたもちだった。これは美味しそうだ。
うん、美味いな。兄貴、ごちそうさま!
じゃあ、窓際に行こうぜ!
一口でぼたもちを平らげた不動に続いて窓際へと向かう。
不動は胸元を開けてパタパタさせている。
僕は窓から体を乗り出して、外を確認をしてからひらりと手を振った。
シライト様、見てくださいよ。
ここからお城が見えますよ
おお、本当だ。
あそこからでは皆の顔はわからんが、ここからならよくわかる
仕事が終わって家路に着く人や買い物をする人たちが通りを歩いている。
部屋を見渡しながら感心するように白糸様が呟く。
銭湯の二階には町人だけではなく下級の武士もいる。
町人と武士が同じ場所で談笑をしているのは、お城で生活をしている白糸様にとっては不思議な光景なのかもしれない。
身分の違いもなく、こうして一所に集まり話をしたり遊びに興じたりできるのは素晴らしいことだと思う
それができればいいのだが私にはそのような度胸はないようだ。
ここにいる者たちが私の顔を知っているとは思わないが、私の方が気にしてしまう
何事も一度ですべてする必要はない。一つずつやっていけばいいのだ。