第34話3
文字数 705文字
突き当りに屈まないと先へ進めない場所があった。
正面の板には色鮮やかな風景が描かれている。思いのほか写実的で、これが富士山の絵だったらまさしく銭湯だろう。
奥から出てくる人の体が濡れているからこの先に湯船があるのは間違いない。
しかし、どうしてこんな入りにくい構造になっているのか。もしかしたら茶室の入口みたいな理由があるのかもしれない。
順番に入るようなので並んで待っていると、ぽんと肩を叩かれた。
僕の後ろに並んでいたのは澪だった。
当然、澪も裸だ。
堂々としたもので前を隠す素振りすらない。
あれ? 光は? 謎の光は仕事をしないでもいいんですか?
もしくは湯煙とか、シャンプーのボトルだとかでもいいんですけど!
だってこれではブルーレイ版ですよ! 全部見えちゃってますよ!
視線を下へ向けていく。
腰はきゅっとすぼまっていてお腹のあたりはすっきりしている。
腹筋が割れているということはないけど、戦う者として鍛えているからだろうか。お尻へ続くラインは女性的ではあるけど無駄のない体つきだと言えた。
そう言いながらクルリと体を回して確かめている。
おかげで僕は澪の体を余すことなく拝見することができた。
板をくぐり抜けようとする澪が頭を下げる。
それに続こうとしゃがみかけ、思わず頭を上げてしまった。