第37話1 お酒のおかわり頼まない?

文字数 659文字

お酒のおかわり頼まない?
いいよ。

じゃあ、お酒を一つ

はい、かしこまりました

 澪はペースが速い。僕はまだ二杯目だっていうのに。

 葵はあくまでお付き合いということなのか最初のお酒が残ったままだ。

 つまり澪がほぼ一人でお銚子を空にしたってことになる。

なんかねぇ、ここのお酒を飲んでると故郷を思い出すんだよね。

木と山ばっかりのところだけど、こうして離れてみると、なんだか懐かしくてねぇ。うふふ……

澪の故郷ってどのあたりにあるの?
んーと、ここから北にずーと行った山の中だよ
はい、お待たせしました
待ってましたぁ~
 二本目のちろりがやってきた。葵が受け取ると澪のお猪口を満たす。
私の村でも酒造りをしててね。

毎年、新酒ができると私のところにもってきてくれて、それを飲むのが楽しみだったんだぁ

お酒好きなんだ?
うん、大好きぃ。えへへ。

みんなが一生懸命造ってるんだもん。

できたてのお酒を好きなだけ飲ませてもらえるなんて、すごーく贅沢でしょ

できたてのお酒か。いいなあ。

一度飲んでみたいなあ

じゃあ、今度飲みに来る?
 家に寄って一杯飲んでく?みたいな軽いノリのお誘いだった。
いいの?
いいよいいよぉ。

美味しいお酒、い~っぱい飲ませてあげるぅ

でも澪の領地って遠いんでしょ

 江戸時代だと旅をする男性は一日に四〇キロ近く歩いたそうだから驚きだ。

 日頃の運動不足もあって、徒歩による長距離移動には自信がない。

それは気にしないで大丈夫ぅ。

だって転移の〈門〉を使えばすぐなんだからぁ~

 ちょ、それは内緒だって自分で言ってただろ。

 まったく、この酔っ払いときたら。


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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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