第12話3
文字数 986文字
私の目や耳となって、いつもいろいろな情報を集めてきてくれて。
今回も三桜に機巧武者が侵入しているっていう報告をしてくれたし、キヨマサ君の戦いを目撃して教えてくれたしね
視線を紅寿に向けると、さっと澪の背後に隠れられてしまった。
あう、これはまともに話をできるようになるまで時間がかかりそうだ。
聞こえてくるのは澪の声ばかりだ。
紅寿は僕に話し声すら聞かれたくないのだろうか。
悲しい。
どんな鳴き声――声をしているか聞かせてくれてもいいじゃないか。
僕の場所からだと澪の体の陰で見えないけど、葵が言うのならそうなんだろう。
もしかしてこの世界の犬耳娘は通常の会話ではなく独自の会話術を持っているのだろうか。だとしたら澪はどうやって会話をしているんだ。
うん、この子、ほとんどしゃべれなくって。
でも私は〈友愛の声〉が使えるからこの子が何を考えているかはわかるの。
この子だけじゃなくて、動物や植物の考えていることもある程度は理解できるんだけどね
それが彼女みたいな犬耳――いや、狼耳を持つ種族の名称なのか。
人狼といえばウェアウルフ。またはライカンスロープ。狼男が有名だよな。
普段は人間の姿だけど満月の夜になると狼の姿になるというあれだ。
方向性としてはそういうものに近いのかもしれない。
ただし、この世界では人間の姿でも耳や尻尾が出ていると。