第38話2
文字数 636文字
…………あれ?
紅寿を起こしに行った翠寿が戻ってこないぞ。
せめて紅寿だけでも顔を出してくれたらいいんだけど。
僕の背中では澪が気持ちよさそうに寝ている。
このままここで待っていても仕方がない。
澪の部屋にお邪魔して、布団を敷いて、寝かしつけて、さっと出てくれば問題ないだろう。
部屋の中も廊下と同様に暗かった。スイッチ一つで明かりがつくような照明器具はないのだから仕方がない。
目を暗闇に慣れさせようにも夜目が効くわけではないのでさっぱりだ。
仕方がないので、じりじりとすり足で確認しながら進んでいく。
レイアウトは基本的に僕の部屋と変わらない。
土間があるからまずは履き物を脱いで、足を引っかけないように上がって……お、足が柔らかいものに触れた。これは布団だな。
紅寿のことだ、澪が戻ってすぐに寝られるように布団を敷いておいてくれたのだろう。さすがは紅寿。気が利くな。
布団に沿って位置を変えていき、足先で誰も寝ていないのを確認する。
どんな夢を見ているんだ。出演料はちゃんともらえるんだろうな。
風邪をひかないように掛け布団をかけてあげる。
澪は幸せそうな顔で眠っていた。