第35話1 湯船があるこの部屋は狭くて窓がない
文字数 782文字
湯船があるこの部屋は狭くて窓がない。
だから光源と言えるのは石榴口ぐらいなもので非常に暗かった。隣にいる人の顔がうっすらわかるぐらいだ。
屈まないと入れないようになっているのは湯船のお湯を冷めにくくするのと温まった蒸気を逃がさないようにするためなのだそうだ。
おかげで澪と湯船に並んで入っていても冷静でいられる。
これならテレビ放送時には仕事熱心な湯気も落ち着いていられるだろう。
本心を言えば肩身が狭いどころの話じゃないんですけどね。
冷静になって思い返してみれば、洗い場にいた人たちってほとんど女の人だったもんな。男の人たちは隅の方に追いやられていたように思う。
機巧姫が銭湯に来ることなんてないから、みんな驚いているんじゃないかな。
でも葵の君だと機巧姫だって気が付かれないかもね。
あは、さすがに髪の色でわかるかな
そういえば江戸時代の銭湯には二階があって、そこは男性のみが入れる社交場のような場所になっていたという資料を目にしたことがある。
せっかくだし、お風呂を出たら行ってみようかな。