第47話4
文字数 784文字
だから購入者はごく限られる。
よほど裕福な商家か武家か。
そんな貴重なものだから売買が成立すれば瞬く間に市場関係者の耳に入るそうだ。
操心館に所属していることは素性の保証にならないのだろうか。
ある意味、これほど素性のはっきりした立場の人間も少ないと思うんだけど。
声を潜めながら教えてくれた。
高価な機巧姫を求めるってことは、藤川様か井田様あたりではなかろうか。
お城で会ったあの二人の顔が目に浮かぶ。
楽しそうに人形談義をしてたもんなあ。
入口付近に人目を避けるように背中を丸めた人物がいる。
土気色の顔をしていて、なんだかひどく疲れているようだ。
その人は挨拶もほどほどに宇頭さんに用件を切り出した。
それを聞いた宇頭さんは確認するかのように二言三言、小声で交わす。
血走った目をしたお客さんは苛立たしげな表情をしていた。
あの人、どこかで見たような気がするんだけど、どこで見かけたんだろう。
あ、そうか。永寶屋の中伊喜正さんだ。
それからもう一つわかったこと。翠寿は人狼だから鼻も効くんだな。
つい先日会ったばかりだというのに、十は年をとってしまったかのようだ。