第47話2

文字数 650文字

いらっしゃいませ。

おや、その制服。もしや操心館のお人ですか

 白糸様と不動の視線は人形に釘付けだったので僕が対応するしかない。
よくご存じですね
イダ様にはいつも御贔屓にしていただいております。

申し遅れました。津島屋主人のウトウ・ウヘエと申します。

今日はどのようなご用件でしょうか。操心館には機巧姫を連れ合いにした方が集められていると耳にしていたのですが

実は全員がそうというわけではないのです。

僕は連れ合いがいますが、まだいない仲間の付き合いで今日はお邪魔した次第で

なるほど、左様でしたか
ここにあるのはすべて機巧姫なのですか?

 並んでいる人形の多くは木目がそのままになっている。

 フィギュアであれば彩色前の素体状態といえばわかりやすいだろうか。そのため木彫りの木像といった風情である。

いいえ。こうして店に並ぶのは人形雛だけです

 そうだったのか。

 せっかく足を運んだのに残念だ。このやり取りも耳に入っていない様子の二人の背中を見やる。

シライト様、シライト様。

こっち、こっちがすげーですよ!

おおおお。

この一角に並ぶ人形はどれも豊満な体つきをしているではないか。フドウは目敏いな

連れ合いにするのなら、胸のところがぼんってなって、腰がきゅっとすぼまって、お尻がどーんってしてるのがいいですよね!
わかる、わかるぞ。

私の母上や姉上もこのような体つきをしていてな。それはそれは魅力的な姿なのだ

 二人はまるで中高生のような話題で盛り上がっていた。

 気持ちはわからないでもないけど、もう少し声は落としていただきたいところだ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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