第18話1 二人の人形トークは続いている

文字数 704文字

しかし新人形の仕草。あの作り物っぽさはなんとかできんものか。

機巧姫を見知っておるせいか、見ているこっちが居心地悪いわ

機巧姫と比べなさいますな。そもそも観賞用のものなのですし。

それに人形雛(にんぎょうびな)にもよいところはありますぞ。

一番の利点は外見を好みにできるところでしょう。しかも機巧姫は高価な上に数が多くありませんが、人形雛ならば比較的安価で購入することも可能なのですし

 人形雛っていうのは初耳だ。

 話の流れからすると機巧姫に近い存在のようだけど。


 完全に周囲を置いてけぼりのガチ人形トークが繰り広げられているけど、僕も知識があればこの会話に加わりたいところだった。

 だって、今ここでしているのってキャラクターデザインの話だよ。ゲームクリエイターとして興味があるに決まっているじゃないか!

新人形の表情や仕草が硬いのは国王様のご指摘の通りでございます。

ですが、そこはこれから人形師たちが腕を磨いていくことで解消できるのではないかと思っております。

古式の機巧姫を手本にしつつ新たな風を送り込むことで人形作りが次の段階に進んでくれるのを願っておるのですが、はてさて、そこに至るのはどの人形師なのか。楽しみでなりません

 中央にいる僕を挟んで井田家老の正面に座っている家老の福岡(ふくおか)久衛(ひさもり)様は、この会話が始まってからずっと苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 こちらは井田家老と違い、痩せていて神経質そうな顔つきだ。普段から機巧姫の話で盛り上がる二人から疎外感を覚えているのかもしれない。


 他の人たちはこれがいつものことだとわかっているのか表情を変えていなかった。スルー力って大事だよね。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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