第56話4
文字数 749文字
目が覚める。まだ外は真っ暗だった。
生い茂る木々に遮られて朝日を拝むことはもうしばらくできそうにない。
冷え込みに体をこすって体温を上げる。
軋む体をほぐしていると、物音に気が付いたのか中伊さんも目を覚ました。
深い朝靄で視界もろくに効かない中を出発する。
昨日と同じく中伊さんが先頭だ。誰も一言も口を利かずに山道を歩き続ける。汗と霧で服は濡れて重くなっていた。
何度となく足元をとられて転びそうになる中伊さんの背中が徐々にはっきりと見えるようになる。
顔を上げると太い木の間からキラキラと輝く光のカーテンが垂れ下がっていた。周囲が明るくなったおかげで幾分歩きやすく感じる。
視線の先が少し開けた。
そういえば足元も歩きやすくなっている。何度も人が通って踏み固められたのだろう。
あちらこちらに人が住んでいた跡が見える。
狭いながらも土地が均され、作物が植えられるのを待っている。
だが、この村でその作業をする人はいない。